基礎大枠科目:1
対人援助の技術取得と向上には、「福祉哲学」の展開と深化が必要である。精神保健・社会環境調節支援法 について構築していく。
これらをレイヤーに分けて格納する。(基礎大枠科目:1)
①「ぐるりのホライズン」というプレマッピング
「人のせいばかりにして!」
そう叱られる本人はその通り”自分のせい”だとは考えていない。しかし、全部”お前のせいだ”とも思っていない。100歩譲って自分のせいもあるかもしれないけど、お前にも原因の一部があると思うし、タイミングや場所がたまたま関係してしまってこうなったかもしれない可能性もある、と。そう、「こうなる」ことや「そうなってしまったこと」は”複合的な要因”があるのだ。いつも叱られてしまう先見の明を持ち合わせた複雑な思考回路を持つ問題児と言われてしまう奴の世界には当たり前にして見えている構造だ。
「ぐるり」とは、
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1 物が回るさま。「船が—と向きを変える」「—とあたりを見まわす」
-
2 物のまわりを円を描いて動いたり、取り囲んだりするさま。「
が—ととり囲む」
いわゆる、「ぐる~っと一周まわってー」という、あれ。
いわゆる、「ぐるっとまわりを見てー」という、あれ。
いわゆる、「ぐるっと方向かえてー」という、あれ。
当人からすると周りを見渡して「ほぉ、あそこねぇ」という感じと、
第三者からすると、「ほら、あのへんをさぁ」という感じ。
そのどちらも「距離」ということができる。
すなわち、地点から地点への移動、広がる空間把握、時間の移動という概念がある。
- また慣習的な意味であれば「ぐるり」→「とおまわり」→「それが近道」→「無理しない」→「人生の意味・深み」のような一種の伝統的価値がある。
- はたまた、「ぐるり」と方向を変える→「やってきたことを変えてみる」→「新しい世界を見てみる」→「価値観を変える」→「人生がひらける・うまくいく」のような指針的価値もある。
- そして、当人を「とりまく」「囲んでいる」ものという、環境的比喩→当人にとって「身近である」「関係しているもの」という概念もある。
そのような初期設定をすることで、対人援助の実践における結果・成果・コンピテンシーは大きく変容する。これが「ぐるり」のプレマッピングである。
「福祉哲学」を土台科目として、「精神保健・社会環境調節支援法」の柱である視野を【ぐるりのホライズン】とする。
【ぐるりのホライズン】の項目
1.連続性:ロングレンジと歴史性。プロセスを追って覚えておくこと。
2.浮遊性:目的地はない。コンパス的。
3.時期性:時熟。
4.既存性:V・Eフランクルーもともとあるのだ。
5.影響性:影響はされる。
6.干渉性:よくもわるくも関わりあってしまう。
7.非因果性:必ずしもコレをしたからソウなるとはいえない。
8.自由性:選択肢、運命、宿命のなかでどれにするかという提案。
9.社会適応性:現代の人間社会においてなにが疾病で障害か、根源的に考える。
10.協働性と教示性:とはいえ教えるということもある。
つまり、総合的で包括的、俯瞰的な視野と視点、視座をもって支援するということが言える。
このような考え方は歴史上多く実践がおこなわれきてが、その実践に不足している要素が「哲学」である。人とは何か?生きるとは何か?働くとは何か?病気とは障害とは?すべての事柄について、対象へ個別具体的に「その感覚や現象を表現しようとする営み」を付加し向こう側へ立ちながら、自分が理解しようとする活動を深めさせることが必要だ。でなければ数多くのソーシャルワーク理論は実践において無意味である。それらは言語化と行動において再現が可能なものとして成果を考える。当事者と支援者の二者間の対人関係において具現化される。二者が持ち得る「環境=ぐるり」が影響・干渉しあって新たな現実が生まれる。それは物語といってもよい。
「ぐるり」と「福祉哲学」によって設定・拡張された「精神保健・社会環境調節支援法」はとある流派として存在したい。なぜならば、この技法は属人的な面を抱合していて、しかしそれ故に効果的であり、支援技法として新たな価値を実現すると考えたからだ。つまり確定的な技法として鎮座するのではなく、あらゆる理論と実践にもまれながら、複雑な系譜を描いていきたい。その成長可能性や柔軟性に価値の重きを置きたい。
これらの理解や感覚的同意が「ぐるりのホライズン」のプレマッピングである。